国語の問題に採用される文章中の言葉 ~世代によるすれ違い
国語の問題に採用される文章は、著名な文筆家(作家含む)や学者のものがほとんどですね。つまり、その筆者たちの多くは、君たちからするとかなりの「年配者」ということになります。
今、新聞で連載されている「折々のことば」で有名な鷲田清一氏は、哲学者(元大阪大学学長)です。
彼の雑文の中にこんなエピソードを見つけました。
数人の学生たちを自宅に招いて、カレーライスをふるまったら、
そのうちの1人が「フツーにおいしい」と言ったそうだ。
料理自慢の奥さん(年配者だ)がショックを受けたという。
しかし、君たちの世代なら、この学生の気持ちがわかるでしょう。そう、「お世辞ではなく、実際に」ということを「フツーに」と表現したんだよね。鷲田清一氏の文章もしばしば入試問題に登場しますが、君たちの間にはこのような世代間の語彙語感のギャップがあります。説明文ならまだいいのですが、小説や随筆となると君たちには厳しい時があるのではないでしょうか。
同じ部屋を指すのに、戦前では「お勝手」戦後「台所」今は「キッチン」ですよね。君たちは「お勝手」と言われてわかりますか?
小説の読解には、使われている言葉からその場面を映像として想像できることが大切ですが、メリケン半分(小麦粉のこと)、シャッポ(キャップのこと)、コール天(コーデュロイのこと)etc、言葉を知らないと、頭に浮かんでこないよね。世代の違いは、想像する色さえ違うようです。「カーキ」は何色?年配層は日本軍の軍服を頭に思い浮かべるので「緑がかった茶褐色」じゃないでしょうか。(小説読解には「色」が大切な小道具のときがありますよ)
このように、問題文の中の語句が君たちにとっては、よく分からない、あるいはイメージと違うということになると読解が難しくなってしまう場面が出てきますよね。
入試問題の国語におけるこの世代間ギャップは指摘されて、もう十年余りになりますが、著名人の文章から出題するならば、仕方のないことですね。やはり、本を読んだり、映画を見たり、しっかりアンテナを立てておかないとね。漫画「サザエさん」には「お勝手口」が登場してますよ。