乗り物の進化 ~車輪~

四月の地震で大きな被害を受けた熊本城。復旧にはまず損傷を調べることから始まります。しかし、現段階では崩れる箇所もあり、そのままでは人間が近づけないので、地上からの撮影や空撮で、損傷箇所を確認しています。しかしこれらの撮影方法では角度がついてしまい出っ張った石に隠れる部分などがあり、完全ではないそうです。
そこで「ドローン」の登場。
「ドローン」はもともと軍用として開発された物で、現段階では礼讃と反発とでその評価が揺れているようです。より速く、より遠く、より楽にと人類は古代から物を運ぶための工夫を重ねてきました。(十五世紀、帆船が大航海時代を切り開き、十八世紀の蒸気船、十九世紀後半の自動車。二十世紀初頭の飛行機と。)
今やドローンということですが、輸送のための最初でしかも最大と言われている発明は何か分かりますか

それは「車輪」です。今でも輸送乗物の根本は「車輪」ですものね。紀元前二千年頃、シュメール人が陸上輸送手段だった「ソリ」に、「車輪」をつけたと言われています。シュメール人とはメソポタミアに住む人々のことです。(中学一年生のはじめに学びますね。)「円」を用いることを考え出すというのはいかにもメソポタミア文明らしいですね。なぜかというと、彼らの作った文字は「くさび形文字」、同時期のエジプトや中国の文字が「象形」(小学五年生で習いました。)であるのに対し、「くさび形」はいわゆる数字のような記号です。文字を形からではなく記号に置き換えるところは数学的ですね。ちなみに六十進法の考え方も彼ら発祥です。
車輪という前進するための道具に向かって、「円の運動」を「上下の運動(回転する円盤の円周上の1点に注目し、横方向から観測すると、それは上下運動をしているだけなのだ)」に変換するという今でも使う原理的なものをつくり出せたのも納得がいきます。車輪により、遠いところへたくさんのものを楽に輸送し、そしてその物品を交換するということが可能になった結果、人類最初の「都市」ができたのもこの地方でした。現在、イスラム国うんぬんのイメージが強いチグリス、ユーフラテス川流域のこの地域。紀元前三千年にはすでに算数ではなく、数学的発想をもった人々がいた地域なんだと考えると、何だか印象が違ってきますね。

2016.10月