なぜ本を読むといいの？

高校生までに獲得しておきたい「学力」とはどのようなものでしょうか？
ざっくりと言えば「高校生になって『岩波文庫』あるいは『岩波新書』を手にとって読んでみようかなと思うことができるレベル」と言えるでしょう。

「文庫」は約90年前、岩波書店の創業者が発案したもので、
庶民は本というものが今のように簡単に手に入らなかった（経済的にも流通的にも）時代、
その高価な存在だった本をカレーライス一杯と同程度の廉価で売り出し、手軽に読めるものにした功績は、今もって評価されるものですね。

さらに、その後に追従する多数の出版文庫が時代の流れに応じた選書に至るなか、岩波文庫は一貫して「良書推薦」の枠から外れなかったところが、
知的権威となり得た理由でしょう。

その岩波文庫を読んでみようと思えるためには、何が必要なのかと、
その細部を詰めてみると、まずその本が読める語彙があること~語彙力は、
読書量が影響します。
なぜなら本を読むと普段の喋り言葉よりも膨大な言葉に触れることになるからです。
また、本がダメなら新聞でも毎日読む、
あるいは漢字練習で知らない二字熟語に出会うと必ず辞書で意味を確認すると言ったことでも良いでしょう。

次に文脈の長いもの耐えようとする意志があること～忍耐力。
今やテレビさえ長いカットに耐えられない人のために、めまぐるしい早いカット割りです。
YouTube などはほとんど3秒ほどで、「つまらないと次へ・・・」
となっているのではないでしょうか。

しかし勉強はそうはいきません。
学年が上がるほど長い文脈=聴く、解く、表現する=が要求されます。
本を読むのは文系ぽいと感じるかもしれませんが、例えば岩波文庫にある
「相対性理論 」（by アインシュタイン）は、意外に簡明で
「初等数学の知識があれば理解できる」、科学論文のお手本のようなものと言われています。
このように、総合的な力が学力というものです。
それを持たないで、教科だけを反復ドリルで磨いて、
明日のテストに良い点をとっていたとしても、
本来的な学力を要求されている高校生になると急激に失速します。
身に付けるべきものを間違えてはいけません。

最後に今年東大の入学式での早朝の言葉を引用しておきましょう。

「言葉を大切にしよう。情報の海に溺れて飲み込まれてしまうのではなく、
知に裏打ちされた言葉を自ら鍛え上げる必要がある。」